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設計プロセス ~部品プログラム~

ロケットや人工衛星の機器を開発する際、「部品プログラム」という仕事がある。さまざまな機器を宇宙でスムーズに稼働させるために、機器を構成する最適な電気(電子)部品の選定に始まり、各種の試験や評価を通じて、高い品質や信頼性を保証する仕事だ。
ちなみに、部品プログラムの「プログラム」は、ソフトウェアのプログラミングのことではなく、機器を構成する部品について、「計画する」「取り仕切る」「マネジメントする」などの意味になる。
宇宙事業を根本から支える、部品プログラムという仕事の特徴や独自の魅力について、部品技術部のOkuno Yuki氏に聞いた。

「私たちのしごと」キービジュアルOkuno Yuki

部品プログラムは宇宙事業の全体を支える基盤的な役割

ロケットや人工衛星に要求されるミッション(実施計画)を達成するため、部品技術部には2つのチームがある。部品プログラムチームは、部品選定の方針やスケジュールを決め、顧客の要求や設計者の情報をもとに、コストおよび納期を踏まえつつ、個々の部品に高い品質や信頼性があるかを確認するのが役割だ。
一方、部品技術チームは、部品プログラムチームからの情報や部品の仕様にもとづき、候補部品の評価データを整えるのが仕事だ。メーカーや試験事業業者との調整を行い、評価データの入手や信頼性を確認する試験について決定する。調整の結果によっては、技術的なリスクや代替案を提示し、部品プログラムチームと情報を共有する。
そして、部品プログラムチームは部品技術チームの調整や評価にもとづき、顧客へ当該部品の使用を申請し、採用を承認してもらうという流れだ。部品技術チームが部品ごとの専門家集団なのに対し、部品プログラムチームは国や民間が打ち上げる衛星プロジェクトへ直接参加し、そのプロジェクトメンバーとして仕事をしている。
たとえば、「宇宙で長期間にわたり通信し続ける機器」という要求があれば、安定した稼働を支える部品の品質や信頼性を保証しなければならない。ひとたび宇宙空間に打ち上げられた衛星の機器は、二度と修理ができないからだ。

「15年から20年の長寿命衛星だと、品質や信頼性のいちばん高い部品が要求されます。約5年の探査用の科学衛星だと、寿命は短いのですが、地球の軌道上とは異なるさまざまな宇宙環境にさらされるので、それらの条件を考えて最適な部品を選ばなければなりません」

選ばれる宇宙用部品は、高い信頼性が保証された既存のものもあれば、新規のミッションによっては用途に適した既存部品がないケースもある。その場合は、自社で新たな部品開発も行う。

民生部品を宇宙で使えるようにするチャレンジングが面白い

Okuno Yuki

過酷な宇宙環境に適した部品には、数多くの条件や課題が存在している。ロケットを打ち上げる際の衝撃や振動に耐えられること、強い宇宙放射線や真空の環境でも故障せず正常に動作すること、高温あるいは低温にも強いことなど多種多様だ。
宇宙用部品は、これらの課題に耐えられる信頼性がなければならないが、NECでは日本初の人工衛星に搭載した通信機器の開発に携わってから、50年以上にわたり実績を積み重ねてきた。歴史の長い宇宙事業に関わる魅力を、Okuno氏は次のように話す。

「まだ宇宙で使われていない部品を、どうにか使えるようにチャレンジするのが楽しいです。民生部品を衛星や宇宙機器に取り入れるには、どのような評価や試験を通じて耐久性を確認するかを考えるのも面白いですね」

新しく開発された部品を調査するため、部品の展示会などにも通う。また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(アメリカ航空宇宙局)などが定期的に部品を評価しているので、それらの情報にも絶えず目を配る。

自分の好きな技術分野で宇宙と関われるグローバルな仕事

部品にはいろいろな技術分野があり、“宇宙好き”にはたまらない仕事
部品にはいろいろな技術分野があり、
自分の好きなテーマで宇宙に直接関われる、
“宇宙好き”にはたまらない仕事。

宇宙用部品には、JAXAやNASA(アメリカ航空宇宙局)、ESA(欧州宇宙機関)、米軍などの各種規格が存在する。部品プログラムには、これらの規格に適合した部品を世界中から探す仕事も付随している。

「私自身、部品について詳しかったわけではありません。仕事をしながら、部品の知識や宇宙用部品に関する試験規格を身につけていきました。基本的にはいろいろな分野に興味を持ち、広い視野で眺めながらマネジメントしていく仕事だと思っています」

また、納品先の顧客と部品の品質保証内容について打ち合わせし、その内容を社内や部品メーカーに伝えるため、社内外とのコミュニケーションが必要になる。海外プロジェクトの場合は、国外の部品担当者やエンジニアと情報のやり取りを重ねる。さらに、海外製部品を使用することも多く、直接メーカーに出向いて購入部品の審査をするため、仕事がグローバルに展開することもある。

「宇宙用部品の分野には独自のコミュニティがあって、日米欧の宇宙機関や部品メーカー、部品ユーザーなどが集まって定期的に意見交換をしています。部品自体は小さな製品ですが、大きな視野で世界中の宇宙開発を支えていると実感できるのも魅力だと思います」

部品技術者という職種は、宇宙事業ならではの特殊な仕事だ。プロジェクトごとに顧客は異なるが、同一の衛星やロケットにも多彩なメーカーの機器が搭載されている。中には競合メーカーも含まれるが、プロジェクトを成功させたいという思いや部品についての課題は同じなので、お互い意見交換をすることもある。また、社内には半導体部品などの専門家が数多くいるので、採用の検討や不具合についての的確な支援が受けられる。
近年、民間などの新しい宇宙ビジネス市場が形成されるとともに、民生部品(車載部品など)の選定が可能になり、今後は宇宙用部品だけでなく民生部品についても関わる機会が多くなりそうだ。すなわち、民生部品の開発や採用に携わったことのある経験者なら、宇宙分野でも活躍できる可能性が高いということだ。

「多彩な技術が関わる宇宙用部品について知っていれば、将来的に衛星や宇宙向けの大きなシステムを構築する際にも、その知識がきっと役立ちます。部品には、さまざまな技術分野があるので、自分の興味がある好きな分野で宇宙に直接関われる仕事です」

ミッション成功の充実感を味わう“宇宙好き”にはたまらない魅力

Okuno Yuki

NECには、衛星を丸ごと受注できる技術力がある。衛星に使用する、700~800種類の部品をすべてマネジメントすることができ、とてもやりがいのある仕事だ。

「私は部品プログラムチームで、ロケットや科学衛星の分野を担当しています。ロケットが無事に打ち上げられ、軌道に乗った衛星が問題なく機能しているのが確認できると、この仕事をやってきて良かったとホッとした気持ちになりますね」

「衛星に搭載される部品は、宇宙での耐久性についてフライト実績があるものもあれば、そうでないものもあります。不安な部品は、試験を十分に行い品質や信頼性を確認しますが、やはり宇宙環境でスムーズに稼働した時はうれしいです」
衛星に共通して搭載する一部の部品に問題が起きると、その部品を採用しているすべてのプロジェクトが支障をきたし、開発の後もどりが大きかったり影響が広範囲に及んだりするので、適切な部品を提供する部品プログラムは、宇宙事業の要ともいえる仕事だ。したがって、そこにこの仕事ならではの重責と同時に、大きな醍醐味ややりがいを感じるという。

「宇宙用部品は、日本の宇宙開発の黎明期から50年以上も続く技術領域で、世の中に新しい部品が産まれ続ける限り、終わりがない仕事です。宇宙事業がスタートした当時から、NECはさまざまな日本のロケットや衛星に貢献してきました。また、海外の宇宙事業のために機器を輸出しているので、世界各国の宇宙事業にも貢献していることになりますね」

宇宙に関する知識や技術は、日々新しいものが登場してくるので、それらを学んだり調べたりするのも、“宇宙好き”にはたまらない魅力だろう。

新しい宇宙ビジネス市場の要求にも応えられる体制を整えたい

Okuno Yuki

宇宙開発は、従来のJAXAが主導する事業とは別に、新興企業や異業種からの参入が増えつつある状況だ。部品技術の分野では、国家的なプロジェクトと民間のプロジェクトで、宇宙開発の二極化が進むとみられている。

「これまでどおり、JAXAによる長寿命衛星の製作を続けると同時に、民間などの新しい宇宙ビジネスの市場からの要求にも対応できる、双方の部品プログラム体制を整えていく必要があると思います」

宇宙事業に関する未来の展望を、Okuno氏は最後にそう締めくくった。

Okuno Yuki氏プロフィール
新卒で入社後は、部品技術部の部品プログラムグループに所属し、海外顧客向けプロジェクトを担当。
2017年よりJAXAの安全・信頼性推進部部品プログラムグループに出向し、認定部品の審査・運用や新規部品の評価業務などを行う。2020年に部品技術部に復帰してからは、ロケットや科学衛星などのプロジェクトに参画。
休日は、米国MLBや日本のプロ野球を観戦することで気分転換をはかっている。

Okuno Yukiと衛星

※本記事は、2026年1月14日時点の情報です。