サイト内の現在位置

生産プロセス ~生産管理~

人工衛星やロケットに搭載する機器(以下、宇宙機器)の開発・製造には「納期厳守」という命題が課せられる。納期を守ることは自動車や家電など他の製造業でも当然だが、宇宙機器の場合、打ち上げ日程が決まっていることから、絶対に守らなければならない最重要ミッションだ。しかし、宇宙機器の開発から製造・検査に至るまでには、さまざまな工程がある。想定外のトラブルや難題が発生することも多い。その工程をコントロールし、スケジュール通りに進行させることは至難の業だ。
この、スケジュール通りに工程をコントロールすることを担うのが「生産管理部門」だ。生産管理はどのような業務を担っているのか? また、生産管理部門で働く魅力とは? 生産管理部Katanosaka Yuta氏に話を聞いた。

全体の工程をコントロールする司令塔

「ひとことで言うと、サッカーの司令塔のような役割でしょうか」
Katanosaka氏は、キャリア採用で入社し、衛星搭載機器の生産管理業務を担当。この7月からロケット搭載機器の生産管理業務を担当している。
サッカーでいう司令塔の役割は、試合中、フィールド全体を広く見渡し、チーム全体の攻撃や守備を組み立て、試合の流れをコントロールする重要な役割だ。失点のリスクを発見したらつぶし、得点に向かう流れを作り出して味方のゴールをサポートするなど、自分より周りの選手を輝かせる存在だろう。はたから見て地味で目立たないと思う人もいるかもしれないが、その存在無しでは勝利は得られない。
生産管理の役割は、このサッカーの司令塔のように、工程全体をコントロールし、宇宙機器をスケジュール通りに開発・製造し顧客に納品することだとKatanosaka氏は話す。
「衛星やロケットに搭載する機器は少量多品種となることが多く、自動車や航空機のような量産品とは異なる独特の難しさがあります。一方で打ち上げ日程が決まっており、遅れは絶対に許されません。非常に難易度の高い生産を、決められた期間内に完遂することが求められる仕事です」
そんな厳しいスケジュールを守るため、日々変化する状況の中、即座に判断し、適切なセクションにパスを出し、ゴールへの最適解を導き出す役割ということだ。

すべての工程に関わり、リスクを消していく

宇宙機器の開発・製造フローを大まかに「受注→電気設計→構造設計→製造・検査→納入」とすると、生産管理部は、後工程の「製造・検査」の部分を、いかにスムーズに進められるかを管理するのが主たる業務だと、Katanosaka氏は語る。しかし、ここまで説明したように、納期を守るためにはそれだけでなく全体を見ることが必須であり、前工程から関わらなくてはならない。
「極端な例を言いますと、前工程のスケジュールを管理しなかった場合、『製造・検査』の段階に入った時点で、生産にかかる日程を積み上げると納期をオーバーしてしまうこともあり得ます。最終的に日程を守るためには、前工程にも積極的に顔を出さなければいけません。プロジェクトの受注が決まった段階から、あるいは引き合いの段階から積極的に関わることもあります」
生産管理部門は前工程と後工程をつなぐ役割であり、その役割が機能しないと、納期に間に合わないという事態が起こる。実際に予定通り進んでいないという事態が起きたらどうするのか?
「まず全体に周知し、関係者間で共有することも大事ですが、最終的には会社対会社の問題になりますので、もっと上位層にも周知します。また、なぜ遅れるのかという原因究明も大事で、例えば設計者のリソースが限界なら、解決のため、より上位層にアクションを働きかけます。遅れるなら遅れるで、どうすれば間に合うのかというところの手助けをしていく形になります」
もちろんそうならないよう、その前段階から、リスクになりそうな部分を見つけてつぶしていくことが大切だと続けた。

主体的に“巻き込む”コミュニケーション

生産管理の業務は、顧客との契約納期遵守のため生産計画を立案し、その計画に対し図面や仕様書の出図状況や機器の生産日程が適切に進捗しているかを管理することだ。そのために機器の開発を担当する技術者、製造・検査を担当する現場作業者など、プロジェクトに携わる全てのセクションの人たちと、一緒に仕事をしている。
宇宙機器開発に携わる人たちは、部門に関わらず全体を意識して仕事をしているものだが、中でも生産管理部門は、主体的に“巻き込む”ように動くとKatanosaka氏は話す。
「問題が顕在化する前に、問題の芽を摘むことがまず1つです。それでも起きてしまったことは、最小化しなければならないので、いろいろな人に声をかけないといけません」
スケジュール遵守のため、プロジェクトメンバーに対して少し強めのコミュニケーションを取らざるを得ないこともある。しかし、本当はプロジェクトメンバーには気持ちよく動いてほしいというのがKatanosaka氏の本心だ。そのために、相手にあわせて強く話したり、丁寧に細かく話したりするように心がけているという。
また、生産管理という立場の難しさもあると説明する。
「生産管理が直接その工程をカバーできるわけではないので、最終的にはそれぞれの専門家に仕事をしてもらわないといけません」
もちろん、設計などそれぞれの工程については、ある程度知識を身につけるように勉強しているが、やはりその道の専門家に任せるしかないので、コミュニケーションの取り方がより大切になるということだ。

一体となってトラブルを解決した時の達成感

そんな中、達成感を得られるのは、日程上困難な課題を解決し、生産計画に影響なくスムーズに進んだ時だとKatanosaka氏は話す。
「例えば、当初計画した日程から遅れている状態になり、難易度の高い解決方法を選択せざるを得ない時があります。プロジェクトメンバーに説明すると、理解してもらった上で主体的に動いてもらえて、“前に進みましたよ”と言われた時には、全員で達成したという達成感が得られます」
逆につらい時はやはりトラブルの発生時だ。
「トラブルが起きる時って突然で、大体起きてほしくない時に起きてしまうのですよ。連休の前とか。簡単に解決できない。まずどうすれば解決できるのかという方法から探さないといけないのですが、なかなか出てこないというケースもあります。そういう時は厳しいなって思いますね」
実際にKatanosaka氏が関わったプロジェクトで、何が問題なのかわからないようなきびしい状況に陥ったことがあるという。一つひとつ丁寧に問題点を解いていくしか方法がなく、関係部門の専門性の高いメンバーを集めて、会議をファシリテートし、ようやく問題をあぶり出せて乗り越えられた。
「はじめから難しいとわかっていることをお願いするわけで、誰もやりたくないじゃないですか。しかも時間的に余裕があればいいのですが、もう問題が起きているので、早急にやってもらわなければいけません。関係部門のメンバーも自分の仕事を抱えて忙しいのに、お願いするのは辛いなと思うことはあります」
そんな辛いことがあってもKatanosaka氏が頑張れるのは、「宇宙という分野にはロマンがあり、国家的なプロジェクトに近いことをやっているのは、すごく誇りに思える」という気持ちからだという。人工衛星やロケット打ち上げのニュースに触れると、「自分が少しでも携われているのだ。やってよかった」という気持ちになるという。

初めてのプロジェクトを周囲のサポートで完遂

Katanosaka氏の一番印象に残っているプロジェクトは、初めて任された米国顧客向けのプロジェクトの生産管理業務だ。周囲にサポートしてもらい、四苦八苦しながら計画通り出荷でき、自身のスキルアップを実感できたと振り返った。しかし任された当初は不安しかなかったという。
「いざ自分が任されるとなった時、先輩方が気づけた問題点に私は気づけるのだろうか? 気づけないと、気づいた頃には手遅れになるので、本当に不安でした」
計画通り出荷することができたのは、生産管理部の他のメンバーたちの手厚いサポートとともに、関連するプロジェクトのメンバーたちも、真摯に向き合ってもらえたおかげだとKatanosaka氏は感謝する。
「“ひょっとして達成できないかもしれない”というスタートから、皆さんに協力していただき、なんとか達成できそうなところまで持ち直せた。“我が社はすごいな!”って思いました」

“憶せず聞く”ということが大事

Katanosaka氏は生産管理の業務では、プロジェクトやチームを中心になってまとめ、方向性を導き出す能力が身につくと話す。
「“どうやって相手に伝えるのか”という力がついてくると思います。相手に伝え、チームをまとめ、方向性を導き出していく。これはマネジメントに近いスキルかもしれないですね」
キャリア採用で入社したKatanosaka氏は、新人だった自分に何をアドバイスするのだろうか。
「自分で調べることももちろん大切ですが、“憶せず聞く”ということも大切だと伝えたいです」
わからないまま、自分ひとりで悩んではいけないという。最終的な目的は問題を解決することであり、そのためにはわからないことは人に聞くこと。また、NECスペーステクノロジーには、相談しやすく、話しやすい風土があるという。話しかけることはコミュニケーション醸成につながる。
「どれだけ働き方が効率化されようと結局最後は人と人です。信頼関係を醸成するという意味でも、コミュニケーションの機会を積極的に持つというのは大切だと思います」
宇宙機器開発・製造においては、どの業務でもコミュニケーションが大切になるが、中でも、さらに人間力を求められる生産管理部門。司令塔としてメンバーを輝かせるため、フィールドを見渡し、泥臭いコミュニケーションもいとわず駆け回り、納期遵守(ゴール)へ導くのだ。

Katanosaka Yuta氏プロフィール

C大学 工学部卒業
2022年にNECへキャリア入社し、海外顧客向け人工衛星搭載機器の生産管理業務に従事。2024年よりロケット搭載機器の生産管理業務に従事している。
趣味のバイクは新卒入社と同時に新車で買ったお気に入りの一台。
最近一児の父となったがやめられそうにない。

※本記事は、2024年9月5日時点の情報です。