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機器開発&品質保証 ~キャリアを活かす~ (座談会)
社外で培われた経験や実績を、宇宙事業の最前線で活かす。今回は、キャリア入社で宇宙開発を行う社員たちに、仕事の様子や入社のきっかけ、自身のキャリアをどのように活かせているのか、さらに将来の目標などについて聞いてみた。
出席者は、衛星に搭載するソフトウェア開発のNagahori Yuta氏、衛星用の機器を開発するGomi Mitsuhiro氏、そして品質保証や品質管理を担当するTamai Masanori氏の3名だ。すでに前職で経験を積んできた3者だが、初めて宇宙を相手に仕事をするやりがいや、開発への熱い思いを語ってもらった。

宇宙技術は高度な品質と信頼性に支えられた特別な分野
――まず、みなさんの仕事についてお聞かせください。
Nagahori:人工衛星に搭載する機器のソフトウェアを開発しています。衛星は目的別でいろいろなミッション(実施計画)を行いますが、私が開発するのはそれを遂行するソフトウェアです。
Gomi:衛星に搭載する機器の開発を担当しています。新規開発からリピート生産までグループで協力し合い、開発全体のマネジメントからスケジュール調整まで行います。
Tamai:私は品質保証が担当です。一度打ち上げられた衛星は修理ができないので、機器がミッションを遂行するための信頼性を保証する業務をしています。

――具体的にはどのような仕事をされているのですか?
Nagahori:衛星は目的によって多種多様なミッションを行いますが、ミッションに関して地上と衛星間のデータを制御する機器のソフトウェアを開発しています。各機器へ指令を出したり、エラーを検知して地上に知らせたりする、いわばミッションを成功させるための司令塔のような役割です。
開発では、上位要求からソフトウェア仕様への落とし込み、詳細設計、検証と一連のソフトウェア開発プロセスを行います。私は主に上流のソフトウェア仕様への落とし込みを担当していますが、その過程で社内や協力会社と仕様の調整や、プロジェクトの進捗管理なども行っています。

Gomi:衛星用の機器として、ミッション機器とバス機器の開発を統括しています。ミッション機器とは、衛星がそれぞれのミッションを成功させるために搭載する、衛星固有の特別な機器のことです。たとえば衛星がセンサーで観測したデータを、扱いやすいデータ形式に変換して別の機器へ伝達するなど、与えられたミッションならではの機器のことを指します。
また、バス機器というのは衛星に共通で使われる機器です。たとえば、衛星内の温度管理や姿勢制御を行う装置など、どの衛星にも欠かせない機器のことです。ただし、共通機器といっても地球を回る軌道の高低によっては、放射線や温度の影響が異なりますので、衛星に合わせて少しずつカスタマイズしていきます。

Tamai:機器の設計者から渡された設計解析結果について、その設計品質が本当に大丈夫なのかの妥当性を検証したり、どれぐらいの期間故障しないで稼働し続けるかを計算するのが仕事です。
また、私は社内の品質管理システム(以下QMS)の推進や、ナレッジシステム構築の仕事も担当しています。QMSは全社的な取り組みで行っており、受注から設計、製造、検証、出荷と会社のプロセス全体が、QMSに沿って運用されるように推進していく業務です。
今まで積み重ねてきたキャリアが活かせそうだと転職を決意

――キャリア入社のきっかけはどのような経緯だったのでしょうか?
Nagahori:宇宙事業はハードルが高い印象があったので、転職先の候補としては考えていませんでした。転職エージェントが、宇宙事業の会社があると提案してくれて、自分が今までやっていた車載システムの仕事が活かせそうだと感じたのがきっかけで応募してみようと思いました。
実際に事業内容の説明を受け、自分の経験を十分に活かせることがわかり入社しました。ちょうど人材を募集している最中で、タイミングも良かったと思います。特に、車載システムのソフトウェアを担当しているエンジニアは、抵抗なく仕事ができる分野だと思います。
Gomi:もともとは社会インフラ系の機器開発を行っていたので、前職に近い分野で転職を検討していました。そこへ転職エージェントから、NECが宇宙事業の人材を募集していると聞き、NECが宇宙事業なんてやっているんだと、その時初めて知った次第です。(笑) 子どものころから宇宙が好きで、星や宇宙の成り立ちなどに興味がありました。ですが、Nagahoriさんと同じく宇宙事業はハードルが高いと思い込んでいましたが、ぜひ宇宙用の機器開発に参画してみたいという想いで入社しました。
Tamai:私の転職理由には、インフラ系の仕事をして社会貢献をしたいという思いがありました。子どもにも、社会に役立つこんな仕事をしてるんだよと、話したい気持ちもありました。
そこで、いろいろな社会貢献につながる仕事を探していたとき、たまたまNECの宇宙事業で人材を募集しているのを見つけ、チャレンジしてみたいと思い応募したのがきっかけです。最近、ロケットの打ち上げ中継があると、以前はまったく興味を示さなかった子どもが、気になるのか一緒に打ち上げを見てくれたりするのがうれしいですね。
宇宙分野はレガシーで最先端という両面性に大きなやりがい
――宇宙事業へのイメージが入社前と入社後で変わりましたか?
Nagahori:私はSF映画が好きなので、かなり勝手なイメージがありました。開発現場では最先端ツールを使っていたりと、かなり進んだ環境なのかなと思っていました。でも、実際はソフトウェア開発でいうとレガシーな環境でした。考えてみれば、機器には品質や信頼性の高いものが求められますので、新しいものを取り入れると宇宙環境で把握し切れていない問題が起きる可能性があります。だから、安定稼働が最優先なんです。
宇宙用のソフトウェアを最初から作ると検証などかなり大変なので、基本的には品質が安定した信頼性の高いものを流用していくことになり、レガシーな開発になるのは必然なのだと思います。衛星を打ち上げたら、ソフトウェアでも基本的にメンテナンスは困難なので、一度作ったものは運用し続けるというのが原則です。何よりも品質の高さが求められる仕事なので、最先端のイメージとはやや異なる環境でした。

Gomi:私もNagahoriさんと同じく、SF映画などから衛星には最先端技術が集約されているものとイメージしていました。(笑) でも、入社後は確立された技術を集約させたのが宇宙用機器だと理解しました。信頼性や品質が第一で、開発を進める上では重要なテーマだと考えています。
ただ、最先端技術の分野だと改めて感じてもいます。宇宙環境に適合していない地上の技術や、地上にしかない部品を取り込まなければならないケースもあるのですが、そのような地上の最新技術を宇宙用に昇華させるところに大きなやりがいを感じます。衛星に搭載する機器も、年々機能を進化させなければならないので、いろいろな最新技術を宇宙に適用できるようにするのも、この仕事の楽しい醍醐味だと思います。
また、先ほどTamaiさんから、社内に技術やノウハウを蓄積するナレッジシステムの話が出ましたが、NECのナレッジシステムはきちんと運用されている点や、チェックリストあるいは規定など必要な情報が充実していて、他のメーカーに比べてしっかりしているように感じます。
Tamai:私は最初設計で入社したのですが、やはりみなさんと同じく最先端技術を使っていると思っていました。前職は量産分野のB to B/B to Cの仕事だったのですが、当初は開発の違いにとまどい苦労しました。
そんな時、品質保証部が一緒にやらないかと声をかけてくれ、直接設計の仕事ではありませんが、同部へ異動したことで人工衛星やロケットの機器の設計・開発・製造までの全体を見渡せるようになり、「宇宙技術とは、こういうことなんだ」と実感できるようになりました。エンジニアではないところで、宇宙に関する知識が爆発的に広がり、視界が大きく開けたように感じています。
また、Gomiさんが言われた社内のナレッジシステムの推進役をしているのですが、技術やノウハウをスタッフ個人への依存ではなく、社内のスキルとしてどのように継承するかが課題だと思っています。スキルの継承・ナレッジ化が全社の方針なので、その中でナレッジシステムの運用に携われているのは意義も大きいし、やりがいのある仕事だと感じています。
安全を追求する車載技術と高信頼の宇宙技術は近しい関係
――キャリアを活かせたと実感した場面はありましたか?
Nagahori:宇宙開発では、ソフトウェアもひとつの決まったプロセスに沿って開発を進めなければなりません。そのプロセスは厳しいですが、私は車載系の厳密なソフトウェア開発をしていたので、ギャップはあまり感じませんでした。
安全性を最優先する車載ソフトウェアも、ほぼ宇宙用と変わらないほど厳しい開発プロセスなので、前職での経験が宇宙用ソフトウェアにもそのまま活かせていると感じます。もし車載分野を担当していなかったら、開発のギャップを感じていたと思いますが、そこが経験をそのまま活かせた大きなメリットだと思います。
私は上流開発の担当が主ですが、前職でも顧客からの要求を分析して、社内や取引先と調整を重ねるというプロセスが今の仕事と変わらず、適応しやすかった点もあります。ただ前職の車載分野と異なるのは、宇宙では放射線の影響が大きいので、ソフトウェアが異常を起こさないかどうかを、定期的にチェックをするソフトウェアを作るのが今までにない経験でした。
Gomi:私の場合、宇宙用機器の量産へ向けた取り組みが、当社で検討され始めたタイミングで入社しました。宇宙用部品は、かなり高価で納品までに時間がかかりますが、量産している地上の部品、たとえば車載用や工業用の部品を応用できないか、そのノウハウを蓄積しようとしていた時期と重なりました。
そこで、私が前職で扱っていた部品やその設計などについて意見を上げやすかったことと、量産への取り組みに参加しやすかったことが、経験を活かせた場面だと感じています。また、自分のキャリアを話せる場所が、すぐに見つかったのもたいへんうれしかったですね。
前職で、部品のスペックをいろいろ調べるなど、そのようなスキルがあったことも現在の仕事に活かせていると感じます。

Tamai:私も、Gomiさんに近い感触です。今まで一点もので作ってきた宇宙用機器が、会社の方針でやや量産寄りになってきました。前職では、少量多品種の生産と量産の双方を担当していましたので、その経験がすごく活きたと思っています。
昨年、製品完成まで設計者が製品に張り付く現状を変え、設計者から手離れさせるリピート生産ができないかという、宇宙事業ではまだあまり一般的でない課題を検討するワーキング活動がありました。そこで私は、サブワーキングのリーダーをつとめさせていただきました。その活動を通じて、量産に関する私自身の経験や意見を通していただくなど、前職の経験が大いに活かせたと感じています。
また、設計部門から品質保証部に異動したことで、衛星やロケットの開発から生産まで全体のプロセスが見わたせるようになり、QMSの推進やナレッジシステムの構築などを手がけることで、宇宙技術に関する視界が拡がり知識も深まりました。これらの仕事を通じて、従来の経験やノウハウにも増して大きな成長が得られたと感じています。
自身の成長を実感しながら大きな達成感を味わえるのが魅力
――どのような人が宇宙事業には向いていると思いますか?
Nagahori:地道な作業が多いので、基本的には真面目な性格の人が向いていると思います。(笑)ただし、一方でイノベーション力がすごい人も業務改革のしがいがありそうです。両極端な性格ですが、真面目な人と変革好きな人が入ると、相乗効果で現場が面白くなるような気がします。
また、社内外を問わず仕事ではいろいろな機器と関わるので、他者とコミュニケーションしながらの対外調整力は必要だと思います。
Gomi:最先端の技術を期待して入社してくる人も多いですが、レガシーな技術を使うことも多く、けっこう地味に感じられるかもしれません。各規定にもとづいて開発計画を組立てなければならない機器なので、どうしても地道な作業が必要になります。
ただし、いろいろな部門には専門のプロフェッショナルがいるので、そういう人達と交流しながら自分自身の成長を実感できるところに、大きな楽しみがあると思います。
Tamai:みなさん言われるように地道な作業が多いのですが、そのあとで得られる仕事の達成感というのは、本当に大きいと思います。
わたしの転職理由のひとつに、社会貢献ができる仕事にチャレンジしたいというのがあったことはお話しましたが、その社会貢献の面から見ますと、宇宙開発はものすごく達成感が強い仕事ではないかと思います。
――今後の目標や展望をお聞かせください。
Nagahori:当社もそうですが、世の中は人材が不足している状況です。今後はAIを導入して設計やテストなど、負荷の高い業務を効率化していきたいと考えています。
また、現在の業務をしっかり学びながらスキルの幅を拡げ、マネジメント的な仕事にも挑戦していきたいと考えています。
Gomi:私は、まず自分が携わった衛星が打ち上げられ、宇宙の軌道上でミッションを遂行するという経験を味わってみたいというのが当面の目標です。
衛星は打ち上げまでのスパンが長く、3年後や5年後が当たり前ですので、まだ先の話だとは思うのですが、それをモチベーションにして今後とも仕事をがんばりたいと思っています。
Tamai:宇宙技術は非常に専門的な分野なので、他分野からの情報が入りにくい側面があります。最近はキャリア採用も増えており、他分野を経験した方の新たな目線を導入して、業務改善できるところがあれば変えていきたいと思っています。
そして、同じスタイルの開発をずっと続けるだけでなく、新しいスタイルを取り入れて進化できるところは、積極的に前進させていきたいと考えています。

プロフィール
組込技術部 Nagahori Yuta氏
新卒から2022年までは、車載機器を中心に組み込みソフトウェア開発の前職に従事。設計からテストまで、一貫したソフトウェアエンジニアリングを経験してきた。2023年に入社後は、衛星に搭載する機器のソフトウェア開発を担当。
趣味は、インドア派で音楽や映画が好きだが、ライブに行くのが楽しみ。特に再結成された英国のロックバンド「オアシス」に感動。

搭載技術部 Gomi Mitsuhiro氏
前職は、放送サーバシステムや列車制御装置など社会インフラ系機器の受託開発メーカーで、ハードウェア開発業務に10年以上従事。2023年にキャリア採用で入社後、衛星に搭載される機器の開発グループをマネージャーとして統括。
年に何回か、家族と一緒に国内旅行に出かけるのが趣味。その旅の途中で、家族と楽しくすごすことで気分転換をはかっている。

品質保証部 Tamai Masanori氏
大学院を卒業後、無線機メーカーで車載無線機などのデジタル回路設計やソフトウェア開発などに従事。前職の事務機器メーカーではドキュメントスキャナーの開発に携わる。2023年に入社後は、機器の品質保証をベースにQMSやナレッジシステムの推進を担当。
インドア派で趣味はあまりないが、本が好きでよく読書をしている。特に伊坂幸太郎の作品が大好きで、伏線回収による爽快感を味わっている。

※本記事は、2026年2月9日時点の情報です。